抑うつ気分・セルフケア本まとめ
主に今年読んだ抑うつ気分・セルフケア本のまとめです。今後も新しい本を読んだら更新していきたいと思ってます。
**うつの人の風呂の入り方―精神科医からの「自分で治すための」46提案 単行本 – 2017/3/1秋田 巌 (著)
微妙に興味を惹かれないタイトルと感じるのは私だけでしょうか?!汗
しかし、長年精神科医として臨床で多くの患者さんを丁寧に見てこられた(しかもユング派精神分析家という精神科医の中でもだいぶ変わった経歴)の方のご著書だけあり、現実の生活の中で回復に役立つことを綴ってあります。
特にいいのは、いわゆる自責的な”うつ病”の方だけじゃなく、適応障害の方にも役に立つ内容なところです。(もちろんうつの方も読んで大丈夫。配慮はしてあります)人事労務の方が、病んだ人にどの本を進めたらいいかわから無いときは、この本をおすすめします。
p3 朝の乗りきり方:休んだからといって、決して楽しい1日になるわけではありません
p7 この医者やカウンセラーが合わないなと思えば面倒でもなんとか頑張って医者ないしカウンセラーを変えてください
p10 頑張れは禁句か?
など、うつの本に書くには勇気あることをズバズバと書いておられます。
ちなみにエビデンスの記載などはありませんが、おおむね医師として良心的な配慮と医師としての判断の上書かれていることと感じました。
ちなみに、ユング派ならではなのでしょうか、1章−08”共生(ともいき)”、2章−10の森田療法雑感、4章−24の食事療法についてはだいぶ治療とは離れた内容なので、元気無い方はひとまず飛ばすことをおすすめします。漫画じゃ無いので読むには多少のパワーを要するという意味で**にしています。
***うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち 単行本 – 2017/1/19田中 圭一 (著)
うつヌケのどこがオススメかというと、漫画なので言葉にならない辛さが感覚で共有されやすいこと、16名のケーススタディーなので、人によって違ういろいろな症状が載っていて、自分あるあるを見つけてホッとできそうなところです。例えば、気温差で抑うつ的になる人、電車をよく乗り過ごす人、周りの景色が鮮やかさを失って見えるので着る服だけやたらと鮮やかだった人、線路をひたすら見つめた人などなど、、、。まずはこの本でご自身の体調を振り返ってみるのがいいと思います。
特にうつの人の感覚をうまく表しているなあと思ったのは
p11 まるで脳が濁った寒天で包まれているような
P17の絵!(つらいよおばけが寄ってくる図、、、)
p24の絵!(つらいよおばけが力を失って可愛くなっている図)
(蛇足ですが、この本の中に出てくる YSクリニック宮島先生のYSメソッドを受けるべきか、クライアント先の従業員さんから相談されたことがありました。幾つかの価格設定がありましたが、30万円前後と高額なのと、内容は一般的な運動や食事の指導を含むカウンセリングだったので、それならば産業医や一般のクリニックの主治医と生活記録票チェック、そして心理カウンセリングや本からの情報収集でおおむねカバーできるはずであり、個人的にはオススメしませんでした。もちろんお金にすごく余裕があるとかでしたらその限りではありません)
***「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ) 単行本(ソフトカバー) – 2017/4/10
汐街コナ (著), ゆうきゆう (監修)
この本、過労で病んできている方にぜひお勧めしたい1冊です。今年読んだうつ関連の本では「うつヌケ」と並ぶ名著です。やっぱりメンタルの、”言葉で表現するのは難しいけれど、、、こんなかんじ!”を共有するにあたって、漫画の表現力は偉大です。
***こころとからだのリハビリテーション 職場復帰を成功させるための30日ノート 単行本 – 2014/11/7吉野 聡 (著)
うつ・抑うつ気分・適応障害・不安障害と診断されてこれから職場復帰される方にオススメしている本です。とくにリワークに行けない方は復職1ヶ月前までにこの本に取り組み始めてもらうようにしています。復職前に知っておいて欲しいこと、乗り越えておいて欲しいことが網羅されています。
構成としては毎日見開きで2ページ分を読んで、課題をこなしていただくようになっています。字も細かいですし根気が必要です。(が、このくらいを軽くこなせないと復職は厳しいと思います)復職が視野に入ってから始めることをオススメします。
***NYの人気セラピストが教える 自分で心を手当てする方法 単行本(ソフトカバー) – 2016/9/12ガイ・ウィンチ (著), 高橋 璃子 (翻訳)
この本は、なんとなく生きにくさや不安感、不全感を持って生活している方にとって、(とくにうつでなくても)読んでおいて損は無い本だと思います。産業医面接においても、精神科外来においても、自己否定の声や悩みが頭から離れない、自己肯定感が低いなど、人知れず悩んでいる人は意外と多いのです。まずはこの本のできるところから着手して、少しずつできることを増やしていくことをお勧めします。あと、専門家に相談するべきタイミングについての記載もあるので安心です。
第1章 自分を受け入れてもらえなかったとき ――失恋、いじめ、拒絶体験 第2章 誰ともつながっていないと感じるとき ――孤独 第3章 大切なものを失ったとき ――喪失、トラウマ 第4章 自分が許せなくなったとき ――罪悪感 第5章 悩みが頭から離れないとき ――とらわれ、抑うつ的反芻 第6章 何もうまくいかないとき ――失敗、挫折 第7章 自分が嫌いになってしまったとき ――自信のなさ、自己肯定感の低下
***中高生からのライフ&セックス サバイバルガイド (こころの科学増刊) ムック – 2016/8/16松本 俊彦 (著, 編集), 岩室 紳也 (著, 編集), 古川 潤哉 (著, 編集), 豊島 ミホ (著), 東藤 泰宏 (著), & 13 その他
外来や若手社員さんとの面接で役に立つことがあるんじゃないかなと思い買った本です。居場所がない、住む場所や所属している学校や会社はあっても安心できるつながりがないと思っている人へのメッセージが詰まっている本です。執筆している方もさまざまで、精神科医、お坊さん、元AV女優、保健室の先生などさまざま。ネットトラブルに巻き込まれやすいの洞察 ”根底にコミュニケーション力が足り無い、人間関係の作り方がわからない、自己肯定感が持てない” が書いてあるかと思えば、TENGAを用いた自慰行為のススメなど、内容も多岐にわたりますので、自分にとって刺さるものを拾って読んでもらえればと思います。
***心が晴れるノート 大野裕 創元社 (2003/3/20)
認知行動療法を日本で広めたことで超有名な大野先生のご著書。薄いながらも、日本に認知行動療法を広めるぞ!という心意気が感じられます。よって、使われる技術が教科書的にに盛り込んであります。整然と書いてあるので、論理的な方には向いていると思いますが、人によっては引っかかりがなくて使いにくいかもしれないとも思います。また、理解しながら進んでいくタイプの本なので、本書を使う前提として、仕事に行けるレベルの集中力が必要と思います。カウンセリングでクライアントさんと共に用いる時は、気持ちの整理練習帳、心がすっと軽くなる認知行動療法ノートよりもこの本がシンプルで使いやすいと感じています。
**気持ちの整理練習帖 不思議なくらい心が軽くなる26のスイッチ 大野裕 三笠書房 (2013/7/2)
1の心が晴れるノートから10年後に出版された大野先生の本。26のレッスンといった内容なので、1日に1レッスンずつ進んでいけますので、集中力が落ちて仕事を休みがちになってきている(=勤怠不安定)状態の人や、休職中の方で復職が視野に入ってきた段階でも取り組みやすいものだと思います。逆に網羅的ではないので、理解したい!といった方には向いていません。絵が少ないので、絵が多い方が取り組みやすい人は3をお勧めします。
**心がすっと軽くなる認知行動療法ノート―自分でできる27のプチレッスン― 福井 至 (監修), 貝谷 久宣 (監修) ナツメ社 (2015/4/7)
副題にあるように―自分でできる27のプチレッスン―なので、認知行動療法を体系的に学んでいくというよりも、毎日1つずつプチレッスンをしてみる内容です。絵が多いのと1日にやるのは1レッスンと決められるので、勤怠不安定の人や、休職中の方で復職が視野に入ってきた段階でも取り組みやすいものだと思います。体系的に読み進んでいきたい人にはわかりにくい構成かもしれません。
**折れない心のつくりかた ~はじめてのレジリエンスワークブック~ 単行本 – 2016/11/2 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会(JPPA) (著), 宇野 カオリ (監修), 滝本 繁 (その他)
立ち読みで、使いやすそうだったので購入してみました。ペンシルベニア大学で効果が認められた世界最強のメンタルトレーニング方法と書いてありますが、内容は認知行動療法を一部改変したようなものでした。認知行動療法系の本は、立ち読みして使いやすさで選んでいただくのがいいと思います。
*それでいい。:自分を認めてラクになる対人関係入門 細川貂貂 水島広子 創元社 (2017/6/22)先週名古屋で精神神経学会があって。学会に行くと学会場に本屋さんが小さい出店を出しているんです。紀伊国屋とか、丸善とか。そこで立ち読みをして、読みやすそうだったので買いました。水島広子さんは著名な対人関係療法の専門家。何気ない診療場面を漫画にしてあるので、精神科医としては”あたりまえのことが書いてあってとくになんの感想も湧かない本だ”と思ったんですが、amazonは軒並み高評価でびっくり。いつも自分に駄目出しをしている人に寄り添ってくれる内容です。”うつヌケ”もそうですが、漫画はやっぱり行間を伝えられて、精神科医療についてお伝えするにはとてもいいですね。
医療従事者向け
***保健、医療、福祉、教育にいかす 簡易型認知行動療法実践マニュアル 大野 裕 (著), 田中克俊 (著) きずな出版 (2017/1/27)
この本は一般の方にはお勧めしません。産業医・保健師をはじめとする企業内の保健衛生スタッフや、保健教育に携わる方々にはとてもお勧めの本です。
お勧めのポイントとしては、この本に連動したウェブサイトがあって、認知行動療法について説明する動画やスライドをダウンロードすることができます!これがとても便利。
***タイムマシン心理療法―未来・解決志向のブリーフセラピー 単行本 – 2008/6黒沢 幸子 (著)
産業現場では未来志向のアプローチが合うなあと思うことが多いです。(もちろんうまくいか無い例も沢山ありますが、、、)黒沢さんのクライアントへの質問が具体的でとても勉強になります。
p031 しばらくだとしたらイメージとしては(期間は)どのくらい?
そろそろ。どれくらいがそろそろかな?たとえば、あともう1年くらいはこういう生活で行きたいって感じ?
p32 ゴールデンウィーク明けにこの生活が変わるとしたら、何が変わるのかな?
**ワークシートでブリーフセラピー(CD-ROM付き! )-学校ですぐ使える解決志向&外在化の発想と技法 2012/7/3 黒沢 幸子
上記、タイムマシン心理療法のダイジェスト版としてお勧めです。ちなみに学校で使う仕様なので、外来や産業現場でそのままでは若干使いにくいです。