部下育成・研修系の本まとめ
産業医面談の事後措置では、人事労務の方とチームビルディングやマネジメントについての話題になることがあります。そんなニーズから、産業医として働くようになって読んだ部下育成系のおすすめ本を中心に、もう一度手に取りながらまとめました。
総論
***駆け出しマネジャーの成長論 - 7つの挑戦課題を「科学」する (中公新書ラクレ) 単行本 – 2014/5/9 中原 淳 (著)
人事労務・管理職・マネージャー向けの本。
駆け出しマネージャー向けに書かれている本ではありますが、
p217 マネジャーを育成するために何ができるか
以降が、この本のとくに優れたところだと思います。マネージャー目線に立った組織からの支援、ってなかなか手薄なところが多いと思うので、これを題材に人事労務の方々がマネージャー支援、チームビルディングに関わってくれるといいんだよなあ〜と思っております。
**会社の中はジレンマだらけ 本間浩輔 中原淳 光文社 (2016/4/19)
人事労務や管理職向けの本。
フィードバック入門と半分以上内容かぶる。どちらかだけ読めばいいかも。
なぜ働かないおじさんの給料が高いのか、という章があるあたり(笑)ヤフーの本間さんの、現場ならではの割り切れなさにも触れているので、『やりましょうワークライフバランス!!!』系の本に疲れている方におすすめです。
各論〜部下育成
***職場の問題地図 職場の問題地図 ~「で、どこから変える?」残業だらけ・休めない働き方 単行本(ソフトカバー) – 2016/9/16沢渡 あまね (著), 白井匠 (イラスト)
管理職、マネージャー向けの本だけれど、上司からの手戻りが多い部下にとってもぜひ読んでもらいたい本。
”職場あるある”を改善するため明日から使える具体的な方法をわかりやすく解説しています。本の題名に従って、章立てが”1丁目”と番地になっているところもかわいい。
p11 多くの企業がWLBとして取り組んでいるのは制度と個人スキルだが、プロセスと場についてもメスを入れないと職場の問題は見えてこないし解決しない!
個人的には1丁目:手戻りが多いのなかの成果物のイメージ合わせと報連相設計がカギ、5つの要素(目的、インプット、成果物、関係者、効率)で仕事を捉えるが大変勉強になりました。
9/15に”かるた”も発売されましたね。買ったらまたここに感想をあげたいと思います。
職場の問題かるた ~“言える化"してモヤモヤ解決! ([かるた])単行本 – 2017/9/15沢渡 あまね (著), 白井 匠 (イラスト), 戸松遥 (その他)
***フィードバック入門〜耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術 中原淳 PHP研究所 (2017/2/18) 管理職、マネージャー向けの本。
この手の本は”正論しか書いてなくて現場で使えない”と思わされることが多い中、学術的な話から具体的な声かけ例ナドナド手厚い一冊。各章にまとめがあるので、そこだけを読むのもいいと思います。精神科医としても、傾聴だけでなく耳の痛いことを伝えられてこそ一人前!と思うので、ぜひ手元に置いておきたい一冊。
p60 部下が育たないのは「みんなの問題」ーもてはやされた「コーチング」コーチングは良いものでティーチングは悪いものという認識が広がったが、コーチングとティーチングどちらか一方では部下は育たない。
P74 フィードバックこそ、最強の部下育成方法 1【情報通知】=ティーチング的 たとえ耳の痛いことであっても、情報や結果を通知すること。2【立て直し】=コーチング的 部下が自己の業績や行動を振り返り、行動計画を立てる支援を行うこと。
各論〜ファシリテーション
***ファシリテーターの道具箱―組織の問題解決に使えるパワーツール49 ペーパーバック – 2008/3/14
チームリーダーなど、リーダー・マネージャー向けの本。
たんに会議をファシリテートするだけでなくて、集団の知的生産性を高めるファシリテートにつかえる道具が揃っている本です。
p28 これで、議論は脱線しない:また部長が脱線し始めた・・のを誰も止められない(涙)を防ぐPA作戦(パーキングエリアに見立てた白紙をアジェンダとは別に貼って、そこに脱線話の内容を書き込んでいく)
p46 できることに集中させよう:できないことや変えられないことを議論しても時間の無駄なので、コントロール可能と不可能にグループ分けする
p92 リーダーズ・インテグレーション:全員自己紹介後、リーダー退場。リーダーについて知っていること、知りたいこと、知っておいて欲しいこと、今年の目標を達成するためにみんなができることを挙げる。リーダーが戻ってきて質問やコメントに答える。
などなど。
ちなみに、某コンサル会社はこの中の1〜2個のテクニックを切り出して商売繁盛してますけど、高いコンサル料払わなくても、1429円でこの本を買えばできる!(やる気があればね)
各論〜採用・育成
***アルバイト・パート[採用・育成]入門―――「人手不足」を解消し、最高の職場をつくる 単行本(ソフトカバー) – 2016/10/28 中原 淳 (著), パーソルグループ (著)「人を育てる科学」の研究者中原先生とパーソルグループが2万5千人の調査をもとにまとめた本。
人事労務や新人を受け入れるマネージャー、店長さんなど向け。
p31 50%のアルバイトは半年の間に離職(さらに、1ヶ月未満の早期離職者は離職全体の22%を占める)
p34 時給の高さがアルバイトの離職防止に与える影響はさほど高くない
p44 外食・小売では49.8%のアルバイト応募者が店に下見に来ている→職場づくりそのものが最大の求人メディアなどなど、おもしろいデータがたくさん載っています!アルバイト・パートだけでなく、正社員や派遣社員まで活かせる内容です。
各論〜研修
***研修設計マニュアル: 人材育成のためのインストラクショナルデザイン 単行本 – 2015/4/19鈴木 克明 (著)
人事労務の方向け。
研修をするときにp3”本当に研修が必要な者だけが受講しているか””研修の準備が十分な者だけが受講しているか””研修の成果が確認できた時点ですぐに終了と認定しているか”などなど、よりよい研修にするするどい視点の本で、これ1冊実行したら素晴らしい研修が絶対にできます!!!!と自信を持っておすすめできます。ちょっと専門書でとっつきにくい感じがするかもしれないですが、中身の非常に濃い本です。
p57 研修発注書を作る
だけでも一読の価値があります。企業の中で研修をする側として人事労務の方と一緒にお仕事をさせていただくときには絶対にこの本を読みながらにしようと思っています。
各論〜コーチング
**ひとりでも部下のいる人のための世界一シンプルなマネジメント術 3分間コーチ 単行本 – 2008/3/13伊藤 守 (著)
管理職・マネージャー向け
職場の問題地図、フィードバック入門にも、具体的なやり方が書いてあるので、個人的にはそちらの方がおすすめですが、部下とどんな設定をして、実際に何を話したらいいか、よりカウンセリングに近いイメージで知りたい人はおすすめです。わたしがすごくいいなと思っているのは3分間なら忙しくても作れるよね!ということで、ぜひ3分間のコミュニケーションタイムを習慣化するマネージャーが増えるといいなと妄想しております。ちなみに、あるあるなのが
p107 「何かあったらいつでも聞いてね」では、聞けない。3分間は雑談を交えるには短すぎるので、できるだけ具体的に、率直に本題に入りたいものです。「スケジュールについて聞きたいことがある」「営業のスキルについて尋ねたいことがある」「休みの取り方相談してね」
「何かあったらいつでも聞いてね」これを言ってる上司の方、多いんじゃないかなあ〜。月曜から金曜まで、日替わり5個質問を用意しておくとかでもいいと思うんですよね。
ほか、マンガでやさしくわかるコーチング 単行本 – 2014/3/22CTIジャパン (著), 重松 延寿 (その他)、図解コーチングマネジメント 単行本(ソフトカバー) – 2005/4/21伊藤 守 (著)や、NLPの本などこれまでにいろいろ読みましたが、時間がない中で読書をしているみなさんへはおすすめしないです。”コーチングとなんたるか”を書いた系の本たちです。コーチとして食べていきたい人以外にはおすすめしません。
そのほか。社外プレゼンの資料作成術 単行本(ソフトカバー) – 2016/2/19前田 鎌利 (著) スライドのビジュアルについての本。どれだけ文章を減らして”感情に訴える”プレゼンにするかという内容なのだけれど、とある研修の宿題で企業向けの企画書をこの本を意識して作成したらほぼオールCでしたよwww(SがよくてCがわるい)TPOだいじですね。